2020年08月17日公開
2020年08月17日更新
スコットランドのスカートのような「キルト」とは?チェック柄の意味など紹介!
スコットランドでは「キルト」と呼ばれるスカートのような民族衣装があり、現在も結婚式やお祭りの他、日常的に着用されています。キルトには長い歴史があり、スコットランドの人々にたいへん親しまれています。そんなスカートのようなキルトについて詳しく紹介しましょう。

目次
スコットランドでは男性がスカートを履く?
スコットランドといえば、チェック柄のスカートのような民族衣装を身に着けた男性が、大きなバブパイプを演奏する姿を思い浮かべる方もいることでしょう。
また最近では映画「ハイランダー」や「ブレイブハート」「ロブ・ロイ」などで主人公たちがスカートを身に着けていたのでお馴染みかもしれません。
このスカートのような服装は、スコットランドの伝統衣装で「キルト」と呼ばれるものです。日本でも広く知られるようになりましたが、昔は「スコットランドでは男性もスカートを履く」と不思議に思われたものです。
今回は、そんなスコットランドの伝統衣装であるキルトについて、歴史や柄などについて詳しく紹介しましょう。
スカートではなく「キルト」と呼ばれる伝統衣装
スコットランドの男性が腰に巻いているスカート状のものは「キルト(kilt)」と呼ばれるもので、スコットランドの格式高い伝統的衣装です。
キルトは女性が履くスカートのように見えますが、1枚の大きな布地を腰に巻いたものです。キルトはタータンと呼ばれるチェック柄が一般的で、日本でいう家紋のように、氏族ごとに決められた柄があります。
スコットランドの民族衣装「キルト」とは
スコットランドの民族衣装「キルト」とは、ウールの大きなタータンチェック柄の布を腰にぐるりと巻き、ベルトなどで留めたものです。
一見スカートのようにも見えますが、伝統的なキルトは1枚の布を腰に巻いたものです。巻き方に特徴があり、お腹の部分は平で、 両腰からお尻にかけて細かいプリーツを作り、上からしっかりとベルトや紐で留めます。
余った布は肩に回して、落ちないように大きなキルトブローチやピンで留めます。雨が降った時はピンを外して頭から巻いたり、寒い時には体にかけたりしていたようです。また、元々が大きな1枚の布なので、寝る時に毛布の代わりに使ったりといろいろ活用していました。
スコットランドの「キルト」と衣類の歴史
スコットランドの民族衣装であるキルトは、長い歴史があります。キルトは元々は戦士たちが着用していた服装で、女性は着ることはできませんでした。
キルトはスコットランドの伝統衣装として長く人々に親しまれています。まずはキルトの歴史を見てみましょう。
スコットランドの「キルト」の起源
キルトは中央アジアからスコットランドやアイルランドなどに渡来したケルト民族が起源です。スコットランドの北部の高原痛い、ハイランド地方に定着したケルト民族は、スカートのような民族衣装を身に着けていたとされています。
やがてゲルト民族は、クランと呼ばれる氏族を形成し、氏族のシンボルとしてそれぞれ異なる柄のキルトを着用するようになりました。
キルトとは英語名で、このスカート状の男性衣装はケルト民族の言葉で「フェーリア」と呼ばれていました。フェーリアは、スカートの丈が今よりもずっと短く、ひざ上10センチぐらいだったようです。
ケルト民族は布を腰に巻いてベルトで締め、ベルトに大きなナイフや袋などを下げていました。この古典的なスタイルは「フェーリア・モール」と呼ばれています。
スコットランドとイングランドは、長く戦争を繰り返していました。ハイランド人はスコットランドへの愛国の意味を込めてキルトを着用していました。
18世紀には、イングランドがスコットランドの民族の結束を弱めるためにキルトの着用を禁止しました。40年後にキルトの着用が許可された時には、多くのタータンが失われていたと言われています。
1822年にキルトの転機が訪れます。ジョージ4世がスコットランドのエジンバラを公式訪問し、その際ジョージ4世がキルトを着用したことから、キルトブームが起こりました。
それまで、氏族ごとにパターンが決まっていたキルトですが、ブームをきっかけに大衆化し様々なパターンが生まれました。
その後、第一次世界大戦中にもキルトは着用され、スコットランドの人々のアイデンティティーの象徴とされ、現在までスコットランドの人々に愛されています。
現在、スコットランドの民族衣装として着用されているのは「キルト」あるいは「フェーリア・ベック」と呼ばれるものです。18世紀頃に考案されたもので、従来の1枚布とは異なり上下2枚に分かれてます。そのため簡単に着ることができ、広く愛用されました。
現在のキルトのスカート丈はひざぐらいで、スポーランと呼ばれる小型のバッグを前に下げるのが特徴です。キルトはポケットがないので、バッグに財布などを入れています。
今日、キルトはお祭りや結婚式、行事などに着用されています。もともとは男性の衣服でしたが、最近は男性だけではなく女性も着用することもあります。またスコットランドの連隊の正装にもなっています。
スコットランド以外にもあるスカート状の伝統衣装
男性が着用するスカート状の伝統衣装はスコットランド特有と思われがちですが、世界には男性がスカート状の衣装を着用する地域は少なくありません。
例えばフィジーの男性の正装は、スルと呼ばれる巻きスカートとシャッツになります。また、インドネシアでは男女とも、サロンと呼ばれる巻きスカートのようなものを着用します。
さらにミャンマーでも、正装として男女ともロンジーと呼ばれる筒状布のスカートを着用します。このように巻きスカート状の服を男女とも正装とする国々は、世界に多くあります。
スコットランドの「キルト」の柄について解説
キルトといえばタータンといえるほど、キルトとタータンと呼ばれるチェック柄の布地は深く結びついています。日本では「タータンチェック」と呼ばれることが多く、チェック柄のことだと思われていますが、実はタータンは柄ではなく織物を意味します。
タータンとは色の異なる糸を一定の配分で交互に編み込んだ格子柄の一枚布のことです。私たちがチェックと呼んでいるタータンの柄は氏族ごとに配色が異なります。
ちょうど戦国時代の武将が家紋を掲げて戦いをしたように、タータンのチェック柄は氏族のアイデンティティーと見なされていました。戦場においては、敵・味方を身に着けているチェック柄で見分けたとも言われています。
キルトのタータン柄の種類
タータンのチェック柄は、かつては氏族を表しており、それぞれの氏族によってパターンが異なっていました。地位や身分などによって使える色が決まっていて、色柄によって出身を判断する材料になっていました。
一般的に、身分が高くなるほど色数が増え、パターンが複雑になります。また同じ氏族の中でも、正装用、日常用、 スポーツ用、ハンティング用など様々なパターンがあり、その種類は数百種類とも言われています。
日本のスカートでもお馴染みのチェック柄
タータンチェックは、日本でも女子高校生の制服やマフラーなどに多く使われていて、とても親しみやすい柄です。
ロイヤルスチュアートなど現在でも残っている伝統的な柄はありますが、氏族による色や柄の制限はほとんどなく自由に使うことができます。
現在の「キルト」はスカート状の縫製が多い
スコットランドの男性の正装でもあるキルトは、結婚式や祭礼などに好んで着用されます。かつては1枚の布を腰や体に巻きつけるようにしていたキルトですが、最近は上下に分かれたスカート状のものが一般的です。
スコットランドの街を歩くと、キルトを身に着けた男性をよく見かけます。また、キルトを扱うテーラーもたくさんあります。スコットランドを訪れた際には、テーラーを覗いてみるといいでしょう。
着やすさを重視したスカート状
今日、キルトは上下に分かれていて着やすさを重視しています。結婚式などには、下はスカート状のキルト、上やワイシャツとネクタイ、背広というスタイルが好まれています。
そして脚には膝下まで来る長い靴下、革靴を履くのが一般的となっています。キルトの前には、スポーランというバッグを下げます。スコットランドの街を歩いていると、このような服装をした男性を見かけることがよくあります。
主なタータンの種類
キルトのタータンの柄には、上でお伝えしたように様々な種類やパターンがあります。その数は数百とも言われています。ここで全てをお伝えすることはできませんが、主なタータンの柄を紹介しましょう。
タータンの柄は、1746年にスコットランドで政府がキルトの着用を禁じると、多くが廃れてしまいました。現在、ケルト・タータンとして残っているのは、その後、19世紀から20世紀中頃にかけて誕生したものです。
1963年にはタータンを保護・保存するために、「スコティッシュ・タータンズ・ソサエティ」という団体が設立されました。
またスコットランド・タータン登記所には、スコットランドだけではなく世界中のタータンのパターンが登録されていて、登録されていないパターンはタータンと呼ぶことができないことになっています。
ロイヤルスチュアート
キルトのタータン柄の中で最も有名なのがロイヤルスチュアートです。ロイヤルスチュアートはスコットランドの氏族のパターンではなく、イギリス王室のパターンです。エリザベス女王が赤い上品な柄のマフラーをまとっているお姿を見ことがある方もいるでしょう。
赤い布地にブルーや緑、黄色白などの横糸と、淡い白などの縦糸で織り込まれた美しいパターンです。1882年にジョージ5世がスコットランドのエジンバラを公式訪問した際に着用したのが始まりとされています。
ブラックウォッチ
ブラックウォッチは、ロイヤルスチュアートと並んで最もよく知られているキルトのパターンの一つです。ブラックウォッチは、青ベースの生地に緑や黒のラインを引いたダークトーンの柄で、おしゃれな男性にも好まれています。
ブラックウォッチは、18世紀にジャコバイト党の動きを監視していたハイランド人たちの独立組織のニックネームです。その後、イギリス軍の一部としてハイランド連隊が編成され、ブラックウォッチの柄は軍用として採用されました。
ブラックウォッチは、スコットんランドでキルトの着用が禁止された際にも着用が認められた柄で、伝統的な柄としてたいへん好まれています。
ドレスゴードン
ドレスゴードンは緑とブルーをベースにしたパターンで、制服や女子高校生のマフラーなどにも好まれています。緑と白のパターンに、黄色をアクセントにしたおしゃれなパターンで、男女を問わず人気があります。
ドレスゴードンは、スコットランドの氏族の一つ、ゴードン族のパターンの一つです。ゴードン一族は、12世紀頃にスコットランド東部を本拠にしており、現在はアボイーン城を居城にしています。
このドレスゴードンは、ゴードンタータンに白を加えたおしゃれなパターンで、ドレスバージョンとしてゴードン家の侯爵夫人や女性たちなどの正装として使われた柄です。
マクラウド オブ ルイス
マクラウド オブ ルイスは、黄色の生地にブラックの縦糸と横糸、赤いラインをアクセントにした印象的なパターンです。マクラウド家はノルウェー出身の一族で、スコットランド西海岸のルイ・ハリー島などを領土に勢力を伸ばしていました。
明るい力強いパターンのタータンは、マクラウド家の紋章でもある太陽を表しているそうです。目を引く明るい柄で、日本ではマフラーなどにもよく採用されています。
キルトの着こなし
スコットランドでは、キルトは結婚式やお祭り、日常的な場など様々なシーンで着用されます。キルトの正式な着こなしには様々な決まりあります。そのいくつかを紹介しましょう。
まずキルトの丈は、 ひざまずいたときに裾が地面に触れない長さであることです。そのため、立った時に膝頭の上あたりになるのが適切な長さとされています。
キルトを留めるキルト・ピンの位置にも決まりがあります。男性は膝から少し上辺りに重なっている上の布のだけにピンを留めます。2枚一緒に留めてしまうと女性のスカートになってしまいます。
スポーランはベルトに付ける小袋のことですが、小物を入れておくポケットの役割を果たすだけではなく、キルトがめくれないよ押さえておく役目もあります。ちょうど、おへその真下に来る辺りに留めるのがいいとされています。
スポーランは昼間は布や革製、夜は毛皮を使ったものなどが好まれます。また軍隊用には馬の尻尾の毛で作られたものが使われています。
キルトに欠かせないのがスキヤンドゥと呼ばれる短剣です。現在は本物の刃物ではありませんが、ハイランドの人達が日常的に短剣を使っていた名残りで、キルトを着るときには欠かせない小物となっています。

スコットランドの文化と伝統衣装に触れてみよう
スコットランドの男性が着用するキルトには、スコットランドの歴史と伝統が感じられます。キルトはスコットランドの人々のアイデンティティーとして親しまれています。
キルトに使われるタータンの柄は、マフラーや制服、スカートなど様々なアイテムに採用されていますが、その歴史や伝統にも着目してみると新しい発見があることでしょう。
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