「イモガイ」とは?種類や生息地・大きさ・見分け方・毒の強さまで徹底調査!

砂浜にはきれいな貝殻がたくさんありますが、中には危険なものもあります。その代表的なものが「イモガイ」です。そこでイモガイとはどのような貝なのか、生息地や気になる毒の強さ、もし刺されたらどうするかなどについて紹介していきましょう。

「イモガイ」とは?種類や生息地・大きさ・見分け方・毒の強さまで徹底調査!のイメージ

目次

  1. 1イモガイとは?種類や生態などを詳しく解説
  2. 2イモガイには500種類以上の仲間がいる
  3. 3イモガイの特徴
  4. 4イモガイは食べられる?
  5. 5毒針を持つイモガイに注意
  6. 6危険なイモガイの種類と見分け方
  7. 7イモガイに刺された時の対処法
  8. 8海に行く時はイモガイなどの危険な生き物に気をつけよう

イモガイとは?種類や生態などを詳しく解説

ビーチを歩いていると、きれいな貝殻がたくさん落ちているのを見ます。きれいな模様のものを拾って楽しんだ経験がある方も多いでしょう。しかし中には毒があり刺された人がいるというものもあるのが怖いところです。そんな噂の多いイモガイについて、生息地や気になる毒の情報などを紹介します。

イモガイには500種類以上の仲間がいる

さて、「イモガイ」ですが、アワビやホタテと違って、「イモガイ」という名前の貝があるわけではありません。イモガイというのはイモガイ亜科、もしくはイモガイ上科に属するもののうち、「イモガイ型」の貝の形をしている貝全体の総称です。

そのため、一口にイモガイと言ってもその種類はとても多く、約500種類を数えます。もちろんいくつかの種類のものは日本も生息地の一つなので、実際にイモガイの貝殻を拾った経験がある方も少なくないでしょう。

この500種類のイモガイの中には、毒があり、刺された経験を持つ方もいます。毒があるかどうか見分け方があるのか、そのあたりも気になるところです。

イモガイの特徴

このように500種類もあるというイモガイの仲間たちですが、どのような特徴があるのでしょうか。もちろん500種類もあれば生息地や貝の模様、大きさなどいろいろありますが、イモガイ全般的に言える特徴があります。

そこで、イモガイという種類の貝のもつ特徴として、一般的な点についてまずは紹介します。多くのイモガイはこの特徴の中に当てはまっているので、貝殻を見つけるならば、この特徴をチェックして行くのがおすすめです。

生息地

約500種類もあるイモガイですが、すべて生息地は海というのが特徴の一つです。海の中の生息地は陸が海に接する潮間帯から深海まで広く、その結果として砂浜などに貝殻が落ちていることも少なくありません。

その中でも生息地として多いのが暖流域で、熱帯のサンゴ礁などにいることが多いです。日本の生息地も暖流が流れているところなので、太平洋側なら房総半島以南、日本海側では能登半島以南が生息地として一般的です。暖かい海のところに生息する貝と言っていいでしょう。

特に黒潮が流れてくる太平洋側は多くのイモガイの生息地となっています。特に千葉や和歌山、高知あたりは種類が多く、さらに鹿児島や沖縄になると種類が増えます。沖縄はなんと110種類ものイモガイの生息地となっていると言われています。

円錐形の貝殻

先ほど、イモガイの「定義」で、「イモガイ型の貝の形」というものをあげました。実はイモガイという名前は貝殻の形がサトイモの形に似ているからということからつけられたと言われています。サトイモのような円錐形の貝殻を持つのがイモガイのイモガイたるゆえんといっていいかもしれません。

イモガイは円錐形の貝殻で、貝殻の口がとても小さくできています。後で述べますが、イモガイは別名ミナシガイと呼ばれますが、その名前も貝の身が狭い殻の口からわずかしか見えないことに由来しています。

ちなみにイモガイの英名はcone shellと言いますが、これも日本語に訳すと「円錐形の貝」ということになりますから、やはり日本語と同様にその貝殻の形を特徴としてとらえていることがわかります。

大きさ

では、イモガイの大きさはどのくらいでしょうか。こちらも500種類もあれば、もちろんその種類によって大きさには違いがありますから、一概にイモガイといえばこのくらいの大きさというわけではありません。

イモガイの大きさですが、貝殻の長さの最大で約23センチくらいと言われています。ですから、砂浜などに「落ちて」いれば、ふつうに目につきます。また貝殻も種類によりさまざまな模様があり、とてもきれいなのも特徴です。なんと古代にはこれを腕輪などのアクセサリーにしていたこともあったそうです。

きれいな模様がついていて、大きさもそれなりですから、大人も子供も砂浜を散策していればすぐに見つけられる貝殻と言っていいでしょう。

夜行性

イモガイの生態としてもう一つ挙げられるのは夜行性であるということです。ふだんは岩場に隠れたり、砂の中に潜ったりしていることが多く、暗くなると活動が活発化して動き出すいきものの一つです。

基本的にイモガイは動きは緩慢で、カタツムリのようにゆっくりしか動きません。特に昼間は自分から動くことはほとんどないと言われます。しかしこれが危険なポイントで、昼間の砂浜に動かない貝があれば、貝殻として拾ってしまうでしょう。これで刺されたという口コミが多いのです。

先ほど述べたようにイモガイは身も見えづらく、貝殻なのか中身がいるのかの見分け方は結構難しいです。見分け方に自信がない方は見つけても不用意に手を出さないのがおすすめです。

エサは何を食べる?

イモガイはすべてが肉食性で、食べるエサの種類により3種類に分かれます。小魚などを食べる魚食性、ゴカイなどを食べる虫食性、貝類を食べる貝食性の3種類です。この中で特に魚食性のイモガイのなかには積極的に獲物をとる探索型と、待ち伏せをする待ち伏せ型がいます。

先ほど述べたようにイモガイは動きが緩慢で、ゆっくりしか動きません。それでどうやって魚など動くものをとらえるのかというと、歯舌を発達させた毒銛(矢舌)をとばし、それを相手に突き刺して捕食するのです。

この矢舌こそ、イモガイの毒がたっぷりある部分です。矢舌が刺さると根元から強力な毒が送り込まれ、獲物はその神経毒で瞬時にマヒし、動けなくなります。この先端は鋭く、軍手やウエットスーツも突き抜けてしまうほどなのです。

イモガイは食べられる?

貝というとやはり気になるのが「食べられるのか」ではないでしょうか。次に述べますが、イモガイは猛毒の貝として知られており、「海の殺し屋」などと言われることもあります。実際、イモガイの生息地近くでも、イモガイ料理というのは聞いたことがありません。

たとえば毒があることで知られているフグは、素人はもちろん、料理するためには特別な免許が必要なほど厳密です。フグ中毒はニュースなどにもよく出るように、フグの毒は食べた人の命を脅かします。

イモガイの場合も同様に、身を食べると命にかかわるのでしょうか。それともイモガイの毒は人間にはあまり影響がないものなのでしょうか。

身を取り出すのが難しい

結論から言うと、イモガイの毒は「食べる」分には問題がないと言われています。もしイモガイを入手して食べたとしても、イモガイの毒そのものは人間の胃酸で分解されてしまうからです。

ではなぜイモガイ料理がないのかというと、それはイモガイの構造にあります。先ほど述べたようにイモガイは貝殻の口がとても小さく、ミナシガイという別名の通り、身が見えにくいのです。特に食べるために加熱すると身が縮み、さらに奥に入り込んでしまうのです。

ですから、イモガイは基本的に食用にする貝ではありません。貝殻がきれいなので、貝殻を集めている方などが貝殻目当てで拾うのがほとんどではないでしょうか。

毒針を持つイモガイに注意

このように、イモガイは食べても人間に毒が回ることはないのですが、安心することはできません。実はイモガイの毒は、捕まえたりするときに発射される矢舌に刺されたことで人間の体内に入るのです。食べる場合と違い、刺された場合の毒はしっかりと人間にも効きます。

イモガイの毒はコノトキシンと呼ばれる神経毒です。大した大きさではないイモガイといえどその毒の量は、種類によってはなんと人間30人分の致死量にも相当するというほどですから、決してあなどることはできません。

イモガイはもともと、食用にもならないことからあまり知られていなかったのですが、近年メディアの危険生物特集などで取り上げられるようになり、広く知られるようになりました。

素手で拾うと危険

では、人間がイモガイに刺されたというのはどういう場面で起こるのでしょうか。ここまで述べてきたように、イモガイはとてもきれいな貝殻を持っています。コレクターの方に限らず、砂浜に転がっていればついつい手を伸ばしてみたくなるものです。

しかしイモガイは貝殻の中身が見えにくく、一見すると貝殻なのか、中身がいる貝なのかがわかりません。そのため転がっているイモガイを素手で拾って持っていると、イモガイはそれを外敵と認識してしまいます。そして刺されたということになるのです。

イモガイの矢舌はとても鋭く、素手はもちろん、軍手など布も簡単につき通します。ですから素手で触るのはもちろん厳禁です。イモガイを見つけても不用意に手に取ったり、ポケットに入れたりしてはいけません。

神経毒なので溺死の危険も

では、イモガイに刺されたらどのようなことが起こるのでしょうか。イモガイの毒は神経毒で、刺された瞬間はそんなに痛く感じないという方が多いようです。しかしそれこそがイモガイの毒の怖さです。

イモガイの毒が体内に入ると神経を麻痺させます。めまいやしびれ、吐き気などが起き、ひどい場合には血圧低下、呼吸不全などから死に至る場合もあるほどなのです。

ふつうに砂浜を歩いている時ならまだいいですが、泳いでいる最中に起こったらどうなるでしょうか。刺されたことに気づかず泳いでいるうちに神経のマヒが起これば、溺死する危険もあります。実は日本でもイモガイに刺された被害、さらに刺されたことで亡くなったという事例が報告されているのです。

薬として使われる?

このイモガイの毒ですが、近年薬として使えるのではないかということで研究が進んでいます。イモガイの毒は強い神経毒ですから、鎮痛剤などに使われる可能性が期待されています。

実際、イモガイのある種類に含まれる毒は、なんとモルヒネの1000倍強力と言われるほどの強い鎮痛作用があるとされており、2004年、アメリカの連邦食品医薬品局で医薬品として承認されたものがあります。将来はモルヒネにとって代わるのではないかともいわれるほどです。

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危険なイモガイの種類と見分け方

このように、イモガイは強い毒を持ち、刺された場合には命の危険すらあるということがわかりました。その中でも特に強い毒があるということで、見つけても絶対に近寄ってはいけないと言われるレベルのものがあります。

これらの貝は目にする機会が多いので、なるべく近寄らないことをおすすめしますが、そもそも見分け方がわからなければどうにもなりません。そこで次に、イモガイの中でも特に猛毒で危険とされる貝と、その見分け方について紹介します。

アンボイナ

アンボイナはインド、太平洋のサンゴ礁に多く生息するイモガイです。日本では伊豆諸島や紀伊半島以南を生息地としているため、南のリゾート地に遊びに行って目にする機会が多いかもしれません。

このアンボイナは陸海空のあらゆる生物の中で最強の毒を持つとされ、ギネスブックにも載っているほどです。英語で「葉巻貝」というのは葉巻を吸うくらいの時間で死ぬ、沖縄で「ハマナカー」というのは「浜の半ば」あたりで、「ハブガイ」は「ハブ」のように猛毒があるなど、いずれもその毒の強さは恐れられています。

日本周辺でイモガイの被害に遭った例はいずれもこのアンボイナによるものなのですが、アンボイナの場合、刺された時はあまり痛みがなく、そのあと急速に神経が侵されるため、刺されたと知らずに溺死した人もいるのではないかと言われています。

タガヤサンミナシ

タガヤサンミナシもまた、毒が強いとして知られるイモガイの一種です。大きさは10センチほどで、とてもきれいな模様がついていることから、コレクションなどで手に取る方も少なくありません。

愛知県にある「名古屋港水族館」ではこの貝を展示していますが、この貝がエサを捕食する様子が紹介されています。なんとタガヤサンミナシは貝を捕食する性質があり、同じイモガイの仲間をもエサにしてしまうのだそうです。

見分け方としては他のイモガイと同様に夜行性なので、まず夜にきれいな貝殻を見つけたら十分注意することです。ただし、動きが速いいきものではないので、見つけても触らずにその場を離れれば何の心配もいりません。

ニシキミナシ

沖縄の「美ら海水族館」で展示されているイモガイが「ニシキミナシ」です。名前の通り錦のような美しい模様が貝殻にあるのが特徴で、大きさは7.5センチほどと比較的小ぶりなイモガイです。

こちらも沖縄では「海洋危険生物」になっており、猛毒を持つ生物です。他のイモガイもそうですが、マガキガイという無毒の貝に似ています。見分け方としては、マガキガイの方は貝殻の外側に切れ込みがあるのでわかりますが、見分け方に自信がないならこちらも手を伸ばさない方がいいでしょう。

イモガイに刺された時の対処法

このようにイモガイは種類も多く、見分け方も難しいため、注意していてもうっかりと刺されたということがないとも限りません。では刺されたらどうしたらいいのでしょうか。イモガイは刺された瞬間はあまり痛みを感じませんが、そのあと数分で毒が体内に回り始め、さまざまな症状が出てきます。

気づかず泳いでいると溺死の危険があります。おかしいと感じたらすぐに海からあがり、毒を吸い出し、心臓との間を圧迫し、毒が回らないようにして病院にいきます。

イモガイの毒はハブなどと違い、血清がありません。一方で心筋や中枢神経には影響しないので、呼吸管理さえできれば回復でき、後遺症も残らないと言われます。そのためにもおかしいと感じたらすぐに助けを呼ぶことをおすすめします。

海に行く時はイモガイなどの危険な生き物に気をつけよう

イモガイは大きさも比較的手ごろで、貝殻の模様がきれいなので、つい手を伸ばしてしまいがちですが、命にかかわるほどの猛毒を持っているとても危険ないきものです。見分け方に自信がない場合は近づかないようにしましょう。海の危険ないきものをしっかりチェックし、安全に楽しみたいものです。

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この記事のライター
茉莉花

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