2018年06月11日公開
2020年03月25日更新
「沈黙の塔」を望むイランヤズドへ!ゾロアスター教聖地の見どころ紹介!
「沈黙の塔」は、世界最古の宗教のひとつとされるゾロアスター教の聖地イランのヤズドにあります。かつてハゲタカなどによる鳥葬が行われていた場所である「沈黙の塔」はどんなところなのでしょうか。今回はイランのヤズドにある「沈黙の塔」について見どころをご紹介します。

目次
- 1イランのヤズドにある「沈黙の塔」の情報まとめ!
- 2「沈黙の塔」があるイランはどんな国?
- 3「沈黙の塔」があるイランのヤズドはどんな街?
- 4「沈黙の塔」があるイランのヤズドの気候
- 5「沈黙の塔」があるイランのヤズドと日本の時差
- 6「沈黙の塔」があるイランのヤズドの治安
- 7ヤズドを聖地とするゾロアスター教とは?
- 8「沈黙の塔」は何のためにできた?
- 9「沈黙の塔」の見どころ1:塔が2つある
- 10「沈黙の塔」の見どころ2:塔にのぼることができる
- 11「沈黙の塔」の見どころ3:塔のふもとに残る集会場
- 12「沈黙の塔」以外のヤズドの観光スポット1:ジャメ・モスク
- 13「沈黙の塔」以外のヤズドの観光スポット2:ヤズド旧市街
- 14イランのヤズドにある「沈黙の塔」への行き方
- 15イランのヤズドにある「沈黙の塔」に行ってみよう!
イランのヤズドにある「沈黙の塔」の情報まとめ!
イランの街ヤズドには、かつてハゲタカなどに遺体を啄ませて肉体を葬る鳥葬が行われていた場所である「沈黙の塔」があります。鳥葬は世界最古の宗教であるゾロアスター教の信者たちが行ってきたことで有名な死者の葬り方です。沈黙の塔はいったいどんな場所なのでしょうか。気になる治安情報や行き方なども併せてご紹介します。
「沈黙の塔」があるイランはどんな国?
西アジア、中東にあるイランは正式名称はイラン・イスラム共和国といい、宗教上の最高指導者が国の最高権力を持つイスラム共和制の国です。またペルシアと呼ばれることもあります。国土面積は約165万平方キロメートルで日本の約4.4倍の面積を誇ります。人口は約8000万人で、年々増え続けているのが現状です。
首都はイラン最大の都市テヘランで、イランは世界でも有数の石油埋蔵国です。イランは世界遺産に登録されている遺産が多いことでも有名で、2017年現在22もの世界遺産があり世界でもその数は11位となっています。日本で登録されている世界遺産の数よりも多いのは驚きです。
イランの公用語はペルシア語で、その他クルド語やアゼルバイジャン語なども話されています。若い人々や観光地などでは英語も通じるので、ペルシア語がわからなくても旅行中は英語で乗り切ることができます。しかしイランでは小学校での英語教育を禁止すると発表されるなど、今後英語が話せる人口は少なくなるかもしれません。
イランの住民たちは、何語を話してどの宗教を信仰しているかをかなり重要視しています。イランでは90パーセントの人々がシーア派のイスラム教を信仰していて、シーア派イスラム教は国教に指定されています。残りの10パーセントはスンナ派イスラム教、ゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教が主であると言われています。
イランではシャーリア(イスラムの聖典コーランと預言者ムハンマドの言葉に則り作られた法律)に基づいた政治体制がとられているため、法律上で宗教差別が認められています。また女性の人権や自由の制限、残虐な刑罰が存在するなど国際的に問題視されている部分もあります。

「沈黙の塔」があるイランのヤズドはどんな街?
ヤズドという街はイランの中部に位置し、カヴィール砂漠とルート砂漠の間にあるオアシス都市です。イランの中でも最も古い歴史を持つ街のひとつで、ヤズドの街は約3000年もの長い歴史があります。また最も古い宗教のひとつであるゾロアスター教文化の中心となった場所でもあります。
ヤズドは砂漠の中心にあることから、古くから独特の建築様式の建物がたくさん存在していました。特に世界最大の地下用水路があったり、氷を保管しておく建物があったりと砂漠における伝統的なペルシア建築の様式として注目を浴び、2017年に「ヤズドの歴史都市」として世界遺産に登録されました。
かつてイスラム教による制服から逃れてきたゾロアスター教の人々がヤズドに集まりそこで信仰を続けたことから、ゾロアスター教の中心地となりました。ゾロアスター教の特徴であるハゲタカなどによる鳥葬を行う場所であった「沈黙の塔」や、「アーテシュガーフ」と呼ばれる拝火神殿などが残されています。
「沈黙の塔」があるイランのヤズドの気候
ヤズドの気候は砂漠気候となっていて夏は高温で乾燥していますが、逆に冬はとても寒くなり夏と冬の気温差がかなり大きいのが特徴です。また1日の変化としても日中と夜間の気温差が大きいので、旅行中は年間を通して気温に合わせて脱ぎ着できる服装がベストと言えます。
最も暑い時期は7月で平均最高気温が30度となり、しばしば40度近くになることもあります。また夏場はほとんど雨が降らないためカラッとした暑さではあるものの、日中は水分補給や熱中症対策、日焼け対策が必須となります。逆に夜は20度前半と比較的過ごしやすくなっています。
最も寒い時期は12月から1月にかけてです。平均最高気温は10度ほどで日中で日が出ていてもとても寒い日が続きます。夜間は気温がマイナスになることも少なくないので、しっかりと寒さ対策をしておきましょう。イランでは雨は冬場に降りますが、それほどたくさんは降りません。
「沈黙の塔」があるイランのヤズドと日本の時差
イランのヤズドと日本の時差ですが、5時間半の時差があり日本の方がすすんでいます。またヤズドではサマータイムが実施されているので、3月から9月の夏の期間の間は4時間半の時差と1時間のズレが生じます。特に移行時期の3月下旬、9月下旬は時差をしっかり確認しておきましょう。
「沈黙の塔」があるイランのヤズドの治安
中東といえば内戦や紛争がたくさん起こっていて、国交を断絶しているところもあるなど仲が悪く治安が安定していないイメージを持っている人も多いと思います。その中東にあるイランの治安、そして今回ご紹介する「沈黙の塔」があるヤズドの治安は実際のところどうなのでしょうか。
外務省から出されている治安情報では、4段階のレベルに分けて各国の地域別に危険度をランク付けしています。イランにおいてはパキスタンとの国境付近、イラクとの国境付近にはレベル4である退避勧告が出ています。またパキスタンに近い南東部の地域はレベル2〜3と危ない地域もありますが、それ以外のほとんどの地域がレベル1なのです。
上記の危険な地域では実際にテロが起こったり過激派組織などが滞在していたりしますが、首都テヘランやヤズドの街は比較的安全とされています。ただし現在安全とされる場所でもいつテロや誘拐に遭遇するとも限らないので、旅行中は常に最新の治安情報を入手しておくようにしましょう。
ヤズドの街では人の多い場所ではスリやひったくりなどの軽犯罪は起きているのが現状です。また夜間に一人で出歩くのは控えるのが無難です。日中はそれほど治安も悪くなく、注意していれば安全に旅行することが可能です。またニセ私服警官の強盗被害が多数報告されているので、私服警官に声をかけられても応じないようにしましょう。

ヤズドを聖地とするゾロアスター教とは?
ヤズドを聖地とする、今日ではあまり聞きなれないゾロアスター教とはどのような宗教なのでしょうか。ゾロアスター教は、紀元前6世紀から紀元後7世紀ごろまで中東の大半の地域を支配していた帝国の国教となっている宗教で、世界で最も古い宗教のひとつであるとされています。
開祖はザラスシュトラ(ゾロアスター)という人物で、ゾロアスター教はイスラム教やユダヤ教、キリスト教へも影響を及ぼしたと言われるほどかつては大きな宗教でした。現在は少数となってしまいましたが、おもにイランやインドにゾロアスター教徒が集まって暮らしています。
ゾロアスター教では善の神であるアフラ・マズダが唯一の神とする一神教で、善の象徴として純粋な「火」を崇拝するので拝火教とも言われています。またゾロアスター教では肉体も神の守護のもとにあると考えられていて、清いものとされる遺体に不浄がもたらされることのないよう、ハゲタカなどによる鳥葬または風葬によって葬られます。
「沈黙の塔」は何のためにできた?
鳥葬や風葬が特徴のゾロアスター教ですが、実際に鳥葬や風葬が行われていた場所がこの「沈黙の塔」なのです。沈黙の塔のてっぺんは屋根がなく、広く平らに作られています。そこに亡くなった人の遺体を置いておき、ハゲタカなどの鳥が食べる、もしくは腐敗がすすんだ遺体を風化させるために作られたのが沈黙の塔です。
衣服を脱がせた遺体を、外側から男性、女性、子供という順番に並べたと伝えられています。ゾロアスター教の信者たちにとって肉体は神の守護にあるもので、遺体でさえも神のもとにある清いものと考えられています。沈黙の塔においてハゲタカなどに食べさせる鳥葬は、遺体を汚さずに葬るために作られたシステムなのです。
「沈黙の塔」の見どころ1:塔が2つある
ハゲタカによる鳥葬や風葬のために使われたヤズドの「沈黙の塔」は実は2つあります。左側の方が大きく、右側にある方が小さく作られています。2つある理由は、ひとつの塔をずっと使って穴がいっぱいになってしまったら、もう一方に移りもともと使っていた方が風化するのを待つといった形で使用していたからです。
現在は近くに人が住んでいる街があり、ハゲタカなどによる鳥葬を行うと匂いによる被害が出てしまうことから鳥葬は行われていません。もちろん当時遺体を啄んでいたハゲタカなどもいなくなってしまいました。しかしかつて鳥葬が行われていた2つの塔を下から眺めると、何とも言えない荘厳な雰囲気を感じることができます。
「沈黙の塔」の見どころ2:塔にのぼることができる
2つの「沈黙の塔」には登ることができます。かつて鳥葬が行われハゲタカなどが遺体を啄んでいた場所を実際に見ることができ、とても貴重な体験ができるのです。右側の方が塔自体の大きさが小さいので登りやすくはなっていますが、足場が悪く滑りやすいので注意しながら登りましょう。
頂上まで登ると塔のてっぺんには天井がなく壁に囲まれた円形の広場があり、真ん中に大きな穴がある場所となっています。ここで実際に遺体が並べられ鳥葬が行われていたのかと思うと少し不気味な感じもしますが、日本では体験できない貴重な場所なのでぜひ上まで登ってみましょう。現在はハゲタカが襲って来ることはないので安心してください。
「沈黙の塔」の見どころ3:塔のふもとに残る集会場
2つの沈黙の塔のふもとにはかつてのペルシアの建物跡が残っています。ここでは鳥葬が行われていた時代にお通やなどの儀式に使用されていました。2つの沈黙の塔とかつての集会場跡が、その昔儀式が行われた後に遺体が塔のてっぺんまで運ばれ、ハゲタカなどが集まってきて遺体を啄んでいく場面を思い起こさせます。
「沈黙の塔」以外のヤズドの観光スポット1:ジャメ・モスク
ヤズド市内にあるジャメ・モスクは14世紀ごろにゾロアスター教の神殿として建てられました。その後イスラム教が拡大しこの地を支配して行った時にその神殿をモスクにしてしまいました。ジャメ・モスクにはイラン国内で最も高いとされるミナレット(塔)が当時のまま残っています。
ミナレットを真下から見上げるととても迫力があります。また内装のタイル張りによるモザイクはとても美しく圧巻なので、外から眺めるだけでなく中に入ってそちらもぜひ見てみてください。夜にはライトアップもされとてもきれいで、日中の観光と夜の姿と両方見るのがおすすめです。
「沈黙の塔」以外のヤズドの観光スポット2:ヤズド旧市街
ヤズドの旧市街はいたるところが土色で日干し煉瓦でできている街並みが特徴です。旧市街の中は細い路地や地下水路、モスクなどが残されていて、その中をゆっくり歩くことができます。また土産店や飲食店など現代のものがほとんどないので、当時のままの雰囲気を味わうことができるようになっています。
またこの地域は暑さが厳しいため、その暑さをしのぐためのシステムが古来から開発されています。バードキールと呼ばれる風採り塔がいろんな場所に作られていて、ヤズドの建築の特徴であるカナートと呼ばれる地下水路を利用した冷房の代わりになるものが利用されてきました。
高い煙突のような塔を建物の真ん中に設けて、熱い空気は冷たい空気よりも上に行くという空気の性質を利用して上の方に熱い空気を貯め、地下水路から冷たい空気を通しそれを取り込むことで、私たちのいる空間に涼しい風が通るようになっているシステムです。旧市街の中にそのバードキールがたくさん見られます。
イランのヤズドにある「沈黙の塔」への行き方
沈黙の塔へ行き方をご紹介します。まず飛行機でイランの首都テヘランもしくはヤズド近郊のシラーズ、またはイスファハンへ向かいます。現在日本からイランへの直行便はありません。そのため第3の国での乗り継ぎが必要です。ドーハ経由のカタール航空やイスタンブール経由のターキッシュエアラインズなどがおすすめです。
イラン国内は高速バスが発達していてイラン内のさまざまな街を行き来しています。また夜行バスもあるので、時間を有効に使いたい方はそちらもおすすめです。テヘランからはシラーズなどを経由して、シラーズ、イスファハンからは直接ヤズドまで高速バスに乗っていくことができます。
ヤズドに到着したら、次は近郊を走るバスに乗り換えます。ヤズド市内から沈黙の塔がある「ダフメ」という場所までバスで約20分で到着します。またヤズド市内から沈黙の塔までは、少し割高にはなりますがタクシーの利用もおすすめです。タクシーでも所要時間はほとんど変わりません。
イランのヤズドにある「沈黙の塔」に行ってみよう!
沈黙の塔の紹介、いかがでしたか?イランはイメージに反して実は親日で、治安もそれほど悪くなく中東の中では旅行しやすい国となっています。ゾロアスター教の聖地であり世界遺産でもあるイランのヤズドを訪れて、沈黙の塔でゾロアスター教の歴史を体感してみてはいかがでしょうか。