2018年06月12日公開
2018年06月12日更新
嘆きの壁(イスラエル)はユダヤ教の聖地!男性と女性で祈りの場所が違う?
イスラエルには嘆きの壁というユダヤ教徒の聖地があります。ユダヤ教徒は嘆きの壁に向かい、神に向かって祈りを捧げます。嘆きの壁は男性と女性で祈る場所が違っていますが、今回はその理由と共に、嘆きの壁への行き方や歴史について詳しくご紹介します。

目次
嘆きの壁はイスラエルの祈りの場所!
嘆きの壁はイスラエルにあるユダヤ教の祈りの聖地です。ユダヤ教徒は嘆きの壁に向かい、信仰する神に向かって祈りを捧げます。嘆きの壁は紀元前から残されている壁で、最近では観光客も多く訪れています。そこで今回は、嘆きの壁への行き方や場所、イスラエルの宗教について詳しくご紹介します。
嘆きの壁とは?
嘆きの壁は、かつてエルサレムのヘロデ大王という王が神殿を築いた際の遺構のことです。神殿は紀元前20年に建設されましたが、70年に起こったユダヤ戦争によって、神殿はローマ軍に破壊されました。しかし神殿の西側の壁のみが現在も残されており、現在はその壁が「嘆きの壁」と呼ばれています。
嘆きの壁の大きさと場所は?
嘆きの壁はイスラエルの首都・エルサレム旧市街にあります。現在残っている嘆きの壁は幅約50メートル、高さ約20メートルの大きさがあります。嘆きの壁は石積みの造りになっており、上部17段は修復で積み上げられた石ですが、下部の26段は神殿の建設当初のものといわれています。
嘆きの壁の歴史
嘆きの壁の歴史は、紀元前20年頃、イスラエルのヘロデ大王が建築した神殿の西壁として始まります。70年に「ユダヤ戦争」が起こりますが、ローマ軍により鎮圧されます。鎮圧の際に神殿も破壊されましたが、西壁のみが残りました。その後132年に起こった「バル・コクバの乱」以降、ユダヤ教徒がエルサレムに立ち入ることが禁止されました。
戦後はミラノ勅令によりユダヤ教徒のイスラエル立ち入りが禁止されますが、4世紀になってようやくエルサレムへの立ち入り禁止令が解かれ、1年に1回の入国が許可されるようになりました。最近ではパリ同時多発テロへの哀悼として、嘆きの壁をフランス国旗のトリコロール3色にライトアップする行事が行われました。
嘆きの壁の行き方
イスラエルに入国する方法は、空路と陸路があります。陸路の場合イスラエルに隣接しているヨルダンやエジプトから入国できます。国境に差しかかると出国税を払い、国境越えのバスに乗車してイスラエルに向かいます。出国税、バス代で3000~4000円かかります。イスラエルに入国したら、乗合タクシーに乗り、首都エルサレムに向います。
乗り合いタクシーの料金は3000円ほどになります。タクシーを使うと、入国から約1時間でエルサレムに到着します。日本人は「エルサレム」と呼んでいますが、現地では「ジュレサレム」と呼ぶので観光の際は注意してください。エルサレムの旧市街を道なりに歩いていくと、開けた土地に出て嘆きの壁に辿り着きます。


嘆きの壁は男性と女性で祈る場所が違う?
嘆きの壁は男性と女性で祈る場所が違っており、男性は嘆きの壁に直接手や頭を当てて祈りを捧げます。これは「私は神に従います」という決意を表しています。女性は嘆きの壁の側にあるフェンスの外からしか祈りを捧げることができません。男性と女性が一緒の場所で祈れない理由は、ユダヤ教の教えに関係しています。
ユダヤ教はヤハウェを「信仰の祖」とする唯一神教です。旧約聖書「創世記」には「主なる神は、人から取ったあばら骨でひとりの女性を造った」と記されています。聖書に現れる「人」は、通常は男性を意味します。つまり「男性(アダム)のあばら骨から女(エバ)を造った」という意味になります。
他にも旧約聖書には女性を省いた記述が多く、これがイスラエルの男尊女卑につながっていると考えられています。最近ではこの考えが「時代遅れ」だと指摘され、嘆きの壁に男性と女性が一緒に祈れる場所を設置する提案がされましたが、その提案は保守派のユダヤ人グループによって却下されていました。
2016年1月31日にイスラエル政府は、男女で礼拝可能となる礼拝区域の設置を新たに承認しました。新設される男女共用の祈りの場は男女が分かれて礼拝する祈りの場とは違った場所に造られます。ユダヤ教の戒律に厳格な超正統派は反発していますが、それ以外のユダヤ教徒らは歴史的な決定だと歓迎しています。
嘆きの壁があるイスラエルの治安は?
イスラエルを観光で訪れる際に気になるのが、イスラエルの治安です。イスラエルというと日本では戦争に関する報道をよく耳にするため、治安の悪い場所というイメージを持たれる方が多いかと思います。たしかにイスラエルは未だに治安の悪い場所もありますが、嘆きの壁がある首都・エルサレムの辺りの治安は安定しています。
イスラエルにはキリストの生誕の地・ベツレヘムがあります。ベツレヘムはパレスチナ自治区の中にあるので、日本人からすると内戦の多い場所として治安の悪いイメージがあるかと思います。しかし、実際には普通に現地の人が生活しており、キリストが生まれた場所とされるベツレヘムの降誕教会では、観光客の姿が多く見られます。
イスラエルの元首都・テルアビブは観光客向けのリゾート地があり、街並みも中東というよりはヨーロッパの雰囲気が感じられます。テルアビブ美術館にはゴッホやピカソの絵画から現代アート、イスラエルアートが展示されています。観光客の姿も多く、夜道をランニングしている人もいるので、治安も比較的安全な場所です。

嘆きの壁がある旧市街の様子
イスラエルに入国すると、警察官の姿が多く見受けられます。初めてイスラエルを訪れる観光客の方は最初はかなり威圧感を感じますが、警察官は街中を歩いているので、観光中に段々と見慣れてくるそうです。警察官の中には一緒に写真撮影をお願いすると対応してくれる方もいるそうです。
イスラエルを観光で訪れて道が分からずに尋ねると、イスラエル人の方は色々な人に聞き回って教えてくれるなど、親切な人が多いようです。日本の報道ではイスラエルというと内戦、テロといったマイナスのイメージを思い浮かべるかもしれませんが、現地の人々はそういった殺伐としたイメージとは異なり、優しい人がたくさんいます。
エルサレムでは女性達は宗教上の理由で頭にスカーフを巻き、黒い服を着ています。こうした女性の格好は、チベットやインドでも見られます。男性は普通のファッションで歩く姿も見られますが、宗教上の理由で全身黒い服を着たり、髪の毛を切らないなどの特徴的な服装をする男性の姿が街中で見られます。


嘆きの壁に関係する超正統派・正統派とは?
イスラエルでは同じユダヤ教の中でも超正統派と正統派に教徒が分かれています。超正統派のユダヤ教徒の特徴は、黒い帽子をかぶり黒いスーツを着る、髭を伸ばす、もみあげは生まれてから一度も剃らない、などの見た目の特徴があります。これらはユダヤ教の聖書に従った身だしなみとなっています。
イスラエルの男性・女性は兵役の義務がありますが、超正統派のユダヤ教徒は兵役を免除され、ひたすら聖書を学び、嘆きの壁に祈りを捧げます。超正統派のユダヤ教徒は就労や納税はせずにイスラエルの補助金で生活し、子供は神学校に通い、幼い頃からユダヤ教を学びます。
正統派のユダヤ教徒は身だしなみにもこだわりはなく、私服を着て嘆きの壁に祈りを捧げる人もいます。ただし必ず帽子を被ることが決まっており、帽子がない人はキッパという白い帽子を被ってから、嘆きの壁に祈ります。キッパは観光客も被らなくてはいけませんが、無料で借りることができます。
嘆きの壁は写真撮影できる?
嘆きの壁は基本的に写真撮影は可能ですが、ユダヤ教の安息日の金曜の日没から土曜の日没までは写真撮影禁止となっています。ユダヤ教の安息日は、イスラエルでは労働禁止の日のため、公共のバスや電車も停止しており、レストランや商店も閉店し、国境も閉鎖されます。イスラエルを観光する際は注意してください。
嘆きの壁周辺は3宗教の聖地!
エルサレムには嘆きの壁の近くに聖墳墓教会と岩のドームというユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地があります。聖墳墓教会はゴルゴダの丘があったとされる場所に建てられた教会で、キリスト教の聖地です。ゴルゴダの丘でキリストは十字架にはりつけにされて殺されました。そのため、聖墳墓教会にはキリストの墓があると考えられています。
なぜキリストの聖地がユダヤ教の聖地である嘆きの壁の側にあるかというと、キリストもユダヤ教徒だったからです。そのため、生前のキリストはユダヤ教の聖地の周辺で布教をしていたと考えられています。嘆きの壁の裏手にある岩のドームは、イスラム教の聖地です。
最後にイスラム教の聖地である「岩のドーム」です。イスラム教には3つの聖地があります。アブラハムが息子のイサクを神に捧げようとした場所といわれています。岩のドームに刻まれた碑文には、キリストは神ではないと記されていますが、キリストが預言者であることを認める文章が刻まれています。
なぜイスラエルに3つの宗教の聖地があるかというと、それぞれの宗教が信仰する神が元々同じ神だからです。ユダヤ教では信仰する唯一神を「アドナイ」、キリスト教では「ゴッド」、イスラム教では「アラー」と呼びますが、これらは全て「ヤハウェ」のことを指します。
ただし、ユダヤ教には「神の名前をみだりに呼ぶなかれ」という戒律があるため、ユダヤ教徒は神の名前(ヤハウェ)を口にしません。イスラエルを訪れる観光客、特に宗教に関心の低い日本人からすると、それぞれの宗教で神の名前を別々に呼んでいることから、それぞれの違いがややこしく感じられるようです。
3つの宗教に分かれる理由は?
なぜ信仰する神が同じなのに3つの宗教に分かれているのかというと、それぞれの宗教の開祖である預言者が違うからです。預言者とは、唯一神からの神託を授かる特別な人のことです。預言者は信者たちを救ってくれる救世主(メシア)と考えられています。
キリスト教においてメシアはイエス・キリストであり、イスラム教ではイエスは「イーサー」と呼ばれています。イスラム教のメシアはムハンマドですが、イスラム教ではイーサーはムハンマドの出現を予言した者と考えられています。そのため、イスラム教の聖書コーランには、イエス・キリストはメシアではありませんが、預言者の一人として登場します。
しかし、ユダヤ教ではイエスやムハンマドはメシアを騙る偽物と考えられており、本当のメシアはまだ現れていないと考えられています。キリスト教徒、イスラム教徒からすれば、ユダヤ教は自分たちのメシアを偽物だと迫害した宗教のため、それぞれの宗教が1つにまとまらず、分かれる原因の1つとなっています。
エルサレムの観光名所1:ダマスカス門
エルサレムには、嘆きの壁以外にも観光名所がたくさんあります。ダマスカス門はエルサレムの旧市街に入るための門です。エルサレムの旧市街に入る城門はいくつか存在しますが、その中でも有名な城門がダマスカス門となっています。エルサレムを訪れた際は、ダマスカス門から旧市街へ入場してみてください。
エルサレムの観光名所2:ヴィア・ドロローサ
ヴィア・ドロローサとは「悲しみの道」という意味です。ヴィア・ドロローサはキリストが十字架を背負いながら歩いた道で、キリストはヴィア・ドロローサを歩いた後、はりつけにされて息を引き取りました。普通に現地の人々が歩いているので気付きにくい名所ですが、ヴィア・ドロローサの道はキリスト教の聖地・聖墳墓教会につながっています。

エルサレムの観光名所3:主の祈りの教会
エルサレムの旧市街の側にはオリーブ山という場所があります。オリーブ山は旧市街を出て、タクシーで向かうことができます。オリーブ山はその名の通り、山の周辺にたくさんのオリーブの木が植えられています。オリーブの旬の時期は9~10月なので、その時期に観光すると緑豊かなオリーブの木が見られます。
オリーブ山にはいくつかの教会があり、山からはエルサレムの旧市街を見渡すことができるので、写真撮影の名所となっています。オリーブ山を上ると、「主の祈りの教会」があります。主の祈りの教会はキリストが主の祈りを弟子に教えた場所です。祈りの言葉が世界各国の言語で記されており、日本語の祈りもあります。
エルサレムの観光名所4:昇天教会
昇天教会は、「主の祈りの教会」の近くにある教会で、山の上にあります。昇天教会はエルサレムの旧市街にある聖墳墓教会で亡くなったキリストが復活して、40日後に昇天したといわれる場所です。昇天教会の中には、キリストの足跡とされるものが残っています。昇天教会のあるオリーブ山には、途中にユダヤ人墓地があります。
イスラエルの宗教と嘆きの壁の歴史を知ろう
嘆きの壁とイスラエルの宗教についてご紹介しました。なぜイスラエルに3つの宗教が混在しているのか理解していれば、イスラエルを観光する際も名所の意味を理解しやすくなると思います。イスラエルの治安はその年の情勢によって左右されるので、観光を計画する際は、治安情報も確認した上で観光するのがおすすめです。
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