2018年08月18日公開
2021年01月11日更新
『万田坑』は熊本の世界遺産!炭鉱の歴史が分かる見学料金や時間は?
「黒いダイヤ」と呼ばれ、日本の近代化を支えてきた石炭。熊本県にある「万田坑」はその石炭を採掘する国内最大級の坑口でした。その役割は終えましたが、2015年に世界遺産の一部として登録されました。今回は炭鉱の歴史が分かる「万田坑」をご紹介します。

目次
「万田坑」は熊本にある世界遺産
熊本県荒尾市にある「万田坑」は、三井三池(みいけ)炭鉱の代表的な坑口の1つでした。三池炭鉱は閉山されましたが、万田坑は国の重要文化財、国史跡、そして2015年には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の1つとして世界遺産に登録されました。今回は日本近代化の歴史を感じられる万田坑についてご紹介します。

熊本の炭鉱「万田坑」は何が凄い?
「万田坑」を有していた三池炭鉱は1997年に閉山し、100年を超える歴史に幕を閉じましたが、その後「万田坑」は国の重要文化財、国史跡、そして世界遺産の1部に登録されていきます。全国にはたくさんの炭鉱跡がありますが、それらに比べて「万田坑」は何が凄いのでしょうか。
大正から昭和まで日本を支えた歴史ある炭鉱
現在ではエネルギーというと石油や原子力、太陽光や風力などの自然エネルギーがイメージされますが、昭和の中頃までは石炭が大きくその役割を担っていました。明治維新以来、奇跡的な日本の発展を支えてきた基幹産業が炭鉱だったのです。三池炭鉱の1部である「万田坑」も豊富な石炭産出量で大きな役割を果たしました。
三井三池炭鉱として世界遺産に登録
戦後はエネルギーが石油に転換されたため、石炭の需要が激減しました。1997年には三池炭鉱の閉山と共に「万田坑」も閉じられてしまいましたが、当時最先端の施設や機械などは大切に保存され、国の重要文化財などに指定されていました。
そして2015年7月に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の中の『九州・山口の近代化産業遺産群』の1つとして万田坑もユネスコ世界遺産に登録されることになったのです。
ちなみに「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は岩手、静岡、山口、福岡、佐賀、長崎、鹿児島、そして熊本の8件に点在する23の史跡を1つの遺産として登録したものです。
万田坑の歴史について
熊本県の「万田坑」は三井三池炭鉱の坑口の1つですが、三井が日本の炭鉱の模範となるように総力を挙げて整備しました。第一竪坑は1902(明治35)年に完成、第二竪坑は1908(明治41)年に完成し、国内最大規模の坑口になりました。大正から昭和にかけて設備や機械の充実が図られ、産出量を増やしていきました。
日本経済に必要だった石炭
江戸時代、日本で燃料といえば薪や、木を燃やして作った炭が主なものでした。石炭は「燃える石」として発見はされていましたが、江戸時代末期の開国時には外国船の燃料として提供している程度の利用でした。一転、明治維新で近代化が推し進められるようになると、石炭の需要は激増していきます。
明治維新で日本が推進した鉄道(蒸気機関車)の運行、近代工場の操業などには石炭が不可欠でした。船舶も動力は石炭を燃やして作り出す蒸気でした。
そのような中、三池炭鉱は1889(明治32)年に三井に払い下げられ、設備投資がされていきます。「万田坑」が操業を開始したのは1902(明治35)年でした。
万田坑の歴史と採掘できた石炭の量
「万田坑」が開かれてから2年後の1904年には日露戦争があり、石炭の需要が拡大してきます。炭鉱設備も急速に発達し、万田坑でも巻上機、専用鉄道、排気用発電機、ターボ式扇風機など、当時の最新の設備が整っていきます。全国各地の炭鉱で、鉱山のシンボルである大きな煙突の光景が見られるようになるものこの時期です。
一時、世界恐慌の影響で石炭消費が落ち込んだ時期もありましたが、1937(昭和12)年の日中戦争開始からは軍需で石炭の需要が急増、石炭の採掘量が増えていきます。「万田坑」には明治時代に掘られた2つの竪坑があり、大正初期から昭和初期にかけては年平均66万トンの石炭を産出していました。
特に大正天皇の大喪(葬儀)が行われ、昭和が本格的に始まった1927(昭和2)年から終戦の1945(昭和20)年までの産出量は、年平均86万トンになり、戦争時代の日本を支えていました。
日本国内の石炭産出量は太平洋戦争に突入する1941(昭和16)年に5647万トンと史上最大量を記録します。「万田坑」もフル回転でその一翼を担っていたことになります。
現在はどうなっているの?万田坑を見学に行こう
世界遺産である万田坑の敷地は東京ドームの約1.5倍という広いものです。敷地内には2つの竪坑跡と共に汽缶(ボイラー)場跡なども残っていますが、見学可能なのは第二竪坑周辺の施設のみです。ここは設備がほぼ完全な形で残っていて、当時の採掘の様子や技術などを視覚的に知ることができるのがおすすめのポイントです。
当時の風景が残る炭鉱跡
当時の設備が残る第二竪坑周辺見学で最大の見どころは「第二竪坑櫓」です。これは高さ18.8mの鋼鉄製で、隣接する重厚な赤レンガ造りの建物(巻上機室)とのコラボがノルタルジーを感じさせると共に、往時の繁栄をしのばせます。
この迫力ある「第二竪坑櫓」にはつるべ式の昇降機が吊り下げられ、炭鉱労働者の移動や資材の運搬に使われていました。この坑口は当時深さ264メートルもある竪穴でしたが、現在は埋め立てられてしまっていて、実際の深さや迫力が体感できないのは残念です。
赤レンガ造りの「巻上機室」には太いロープが巻き付いた巻上機と共に、黒電話や注意書きなどリアルに当時を感じられるものが残されています。また、建物内の事務所跡には当時使われていた湯呑みやロッカー、カレンダーなどが無造作な状態で残っていて、多くの人々が働いていた当時の息づかいを感じることができます。
万田坑の現在の姿
現在見学できる「万田坑」の施設には次のようなものがあります。「第二竪坑坑口」は埋め立てられていますが、入口を見ることはできます。ここから274メートルもの地下に降りていったのかと思うと身が引き締まります。
「三池炭鉱専用鉄道敷跡」は周囲の丘の裾を順々に炭鉱開発していった跡を見て取れるもので、万田駅の跡も残っています。
「万田坑」敷地内の屋外には、櫓の巻上機についていたゲージが置かれています。この中に25人入り、地下深くに降りて行ったのです。体についたススを洗い流した浴場、炭坑内の施設のメンテナンス道具が置かれた建物、大牟田市街につながる生活トンネルなども当時を感じさせ、感無量になります。
第二竪坑櫓の2倍の高さがあったという第一竪坑櫓の巨大なコンクリート基礎、今でも開口している深さ273メートルの第一竪坑の口、坑夫たちが安全を祈願した「山ノ神」なども必見のおすすめスポットです。万田坑近くの「万田坑ステーション」には資料や写真が展示されていますので、是非ご覧になってください。
フォトスポットとしてもおすすめ
「万田坑」にはフォトジェニックなスポットがたくさんあります。といってもカラフルでポップなものではなく、歴史を感じさせる建物や鉄や石の素材など、重厚な写真が多くなります。1番人気は、やはり高くそびえる「第二竪坑櫓」と、隣の赤レンガの「巻上機室」です。
古びた機械や施設のクローズアップ写真もなかなか趣がありますし、顔はめパネルもあるのでユーモラスな写真も撮れます。
また、敷地のあちらこちらに見られる時代を感じさせる小さなものも被写体としてなかなか趣があります。アングルや光の加減を工夫して、世界遺産の風景をたくさん写真に収めましょう。
万田坑の体験プログラムに参加しよう
熊本の「万田坑」では、ガイドツアーの体験プログラムがあります。1日6回催行され、1回の所要時間は約30分です。入場料金を払えば、ガイドツアーの代金をプラスで払う必要はありません。ガイドの中には実際に万田坑で働いていた人もいて、より詳しく、臨場感あふれる解説で、自分で見学するより何倍も理解が深まりおすすめです。
「万田坑」のガイドツアーは通年行われていますが、月曜は催行していません。時間は平日、休日に関わりなく10:00から毎正時ごとに15:00の回までです。
催行は1人からで、「万田坑ステーション」で入場料金を払う時に申し込めます。歩きやすい靴で参加するのがおすすめです。
万田坑の料金と営業時間
世界遺産の「万田坑」を見学する際には入場料金がかかります。小学生未満は無料で、年齢を問わず団体料金の設定もありますが、シニア料金は設定されていません。大牟田市にある「石炭産業科学館」と2施設を訪問するなら割引制度があります。「万田坑」の料金や見学時間などをご案内します。
入場料とお得な割引情報
熊本の「万田坑」への入場料は次の通りです。大人料金は410円、高校生料金は300円、小中学生料金は200円です。また、20人以上の団体料金はそれぞれ320円、240円、160円になります。
「万田坑」と「大牟田市石炭産業科学館」の両方を見学するなら、入場料金が割引になるお得な制度があります。「石炭産業科学館」の入場券(半券)を提示すれば「万田坑」の入場料金が団体料金になります。「万田坑」をはじめに訪問する場合も同様です。
有効期限は発券日の翌月の末日までになっています。炭鉱をより深く理解するためにも、時間が許せば両方の施設をお得に訪問してみてはいかがでしょうか。
万田坑の営業時間と休館日
熊本の「万田坑」の見学時間は9:30から17:00までですが、入場は16:30までになっています。休館日は毎週月曜日で、月曜が祝日の場合は開館し、翌日の火曜日が休館になります。GWの4月30日から5月2日、お盆の8月10日から8月15日までは月曜日であっても休館しません。年末年始の12月29日から1月3日までは休館日です。
万田坑までのアクセス方法
熊本の「万田坑」まで鉄道利用の場合は、JR鹿児島本線の「荒尾駅」または「大牟田駅」からバスでのアクセスになります。「万田坑」見学の起点である「万田坑ステーション」までの道のりは、荒尾駅からなら2.4キロメートルで徒歩約40分、大牟田駅からなら4.0キロメートルで徒歩1時間になります。
電車で大牟田駅までアクセス
車がない場合、「万田坑」まではJR鹿児島本線の「大牟田駅」またはその隣の「荒尾駅」を利用することになります。「万田坑」へは「荒尾駅」からの方が近いのですが、快速電車が停まる「大牟田駅」の方が列車の本数がやや多くなっていますので、時刻表やバスの乗り継ぎを見て利用する駅を決めてください。
博多駅から大牟田駅まで
博多駅から大牟田駅まではいくつかの鉄道ルートがあります。JR鹿児島本線なら乗り換えなしで行くことができ、快速電車なら所要時間は約65分です。
2つ目のルートは博多からJR特急「かもめ」で鳥栖へ行き、鹿児島本線に乗り換えて大牟田へ行くもので、約100分かかります。
博多駅から大牟田駅まで行くルートの3つ目は、博多から福岡市地下鉄空港線で天神駅まで行き、そこから歩いて5分ほどの西鉄福岡駅から西鉄天神大牟田線の特急で大牟田駅へ向かうもので、所要時間は約100分です。所要時間はあくまで目安なので、乗り継ぎがある場合はよく時刻表を確認することをおすすめします。
熊本駅から大牟田駅まで
熊本駅から大牟田駅に向かうなら、JR鹿児島本線で1時間弱です。鹿児島本線は1時間に2本か3本しか走っていません。1時間に1本という時間帯もあるので、事前に時刻表をチェックしておく必要があります。その他、熊本市電を使ってアクセスする方法がありますが、乗り換えが2回以上になる上に料金も高くなるのでおすすめしません。
大牟田駅から万田坑までアクセス
JR大牟田駅に着いたら「万田坑」まではバスがあります。西鉄バスの「笹林・一部橋経由倉掛行き」に乗車して「神田」または「倉掛バス」停留所で下車、そこから徒歩になります。バスは1時間に1本ですが、土日祝日なら「万田坑」まで行くバスが1日5本運行されています。
荒尾駅から万田坑までのアクセス
「万田坑」により近い荒尾駅は、大牟田駅の隣の駅です。荒尾駅からは産交バスの「万田中・倉掛」方面行きに乗り約10分、「万田坑前」バス停下車します。荒尾駅からは1時間に1本、毎時5分の出発、万田坑から帰りのバスも1時間に1本、毎時41分の出発ですが、土日祝日は運行のない時間帯があるので注意が必要です。
空港からのアクセス方法
車の場合、熊本空港から「万田坑」までは九州自動車道の利用で1時間強、距離は約60キロです。福岡空港からならやはり九州自動車道の利用で約1時間20分、距離は80キロほどになります。車がない場合は、それぞれの空港からJRの熊本駅や博多駅に向かい、前述のルートで「万田坑」へアクセスします。
万田坑周辺でランチが食べられるお店
世界遺産の「万田坑」をひとしきり見学した後はお腹もすきます。「万田坑ステーション」の北側には地元の特産品を販売する物産売店コーナーがありますが、食事となると周辺で探さないとなりません。荒尾駅周辺に出るのがおすすめですが、何軒か食事ができる店をご紹介します。
ちゃんぽんもあるラーメン屋「ふじや」
「ふじや」は中華そばの専門店で、ラーメン、ワンタンメン、チャーシューメンがメインメニューですが、ちゃんぽんや焼きそば、餃子、野菜炒めなどのメニューもあります。麺類はそれぞれプラス70円で卵入りになり、プラス110円で大盛になります。ラーメンの美味しさが評判で、口コミでもなかなかの高評価店です。
日替わりランチがおすすめ「喫茶店コットン」
「喫茶店コットン」はパスタやハンバーグなど定番の洋食が食べられる喫茶店です。コーヒーにもこだわりがあり、自家焙煎のコーヒーを何種類も揃えています。メニューの中ではランチセットはおすすめで、サラダ、ポタージュスープ、ライスまたはパン、その日のメイン、ドリンクまでついて1000円足らずの値段です。
予約がおすすめ「山口うなぎ屋」
荒尾駅から200メートルほどのところにある「山口うなぎ屋」は100年以上の歴史をもつ老舗の鰻屋です。うなぎは関西風で蒸さずに焼かれるので、表面がパリッとしています。落ち着いた店内には4人用のテーブルが10近くありますが、人気店なので待つことも往々にしてあります。
万田坑は炭鉱の全盛期の風景が残る歴史的な場所
世界遺産にも登録された熊本の「万田坑」の歴史や見学の概要についてお伝えしましたが、いかがでしたか。閉山後もしっかりとメンテナンスが行われ、全盛期の面影を残している「万田坑」は、日本の発展の近代史をリアルに感じられる歴史的な場所であり、通り一遍の観光だけではない何かを感じられるおすすめのスポットです。